介護業界に今こそ望まれる「自律型キャリア」とは? - 介護専門家コラム

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介護業界に今こそ望まれる「自律型キャリア」とは?

 

介護業界に今こそ望まれる「自律型キャリア」とは? 皆川敬

 

プロティアンキャリアとは

私はサニーウインググループで事業経営をする一方で、キャリアコンサルタントとしての活動も行っています。今回は最新のキャリア理論である「プロティアン・キャリア」についてお伝えしたいと思います。

 

「プロティアン・キャリア」とは、会社や組織に過度に依存することなく、自分の軸を持ちつつ、社会や環境の変化に適応しながら自分らしいキャリアを形成していく考え方です。そして、「個人」と「組織」の関係性をよりよいものにしながら、主体的にキャリアを築いていくことでもあります。元々は、ダクラス・ホール教授が1976年に提唱した理論ですが、現代では法政大学の田中研之輔教授が現代版プロティアンキャリアとして深化させています。「プロティアン」という言葉は、火にもなり、水にもなり、時には獣にもなるギリシャ神話の変幻自在の神・プロテウスが語源。プロテウスのように、自分の意志で、自由に、なりたい姿に変化していくことが「プロティアン・キャリア」の核になります。

 

「キャリア」関連の言葉というと「キャリアパス」くらいしか思い浮かばない、と先日ある方に言われましたが、「キャリアパス」とは直訳すると「キャリアを積む道」となりますね。介護業界では国を筆頭に各法人も一般的には初任者研修から介護福祉士、ケアマネを目指すというような「資格」の道として考えることが多いです。それこそ介護業界の「伝統的キャリア」と言えるでしょう。伝統的キャリアとは、一般には昇進や昇格により、収入や地位、権力などが右肩上がりに上昇していくことを前提としたモデルです。「組織内キャリア」と言い換えることもでき、組織にキャリアを預ける働き方で、キャリアのオーナーは組織。あくまでも「組織」によってキャリアは築かれます。一方、「プロティアン・キャリア」はキャリアを築くのは組織ではなく、あくまで「個人」。キャリアは自らの成長や充足を目的として創造していくのであり、組織が管理するものではないと捉えます。個人個人がさまざまなキャリアパスを描いていくのです。会社員であっても会社に依存せず、自分自身の成長を追求する働き方で、キャリアのオーナーは組織ではなく「個人」です。キャリアに社会的な成功や失敗はなく、仕事の報酬は自分の目標が達成されたときに得る「心理的成功」だと考えます。自分を尊敬できるかという「自尊心」を働くよりどころとし、所属する組織だけでなく「市場」で求められる人材であるために、様々な社会の変化に適応していきます。

 

2つのコンピテンシー(アイデンティティとアダプタビリティ)
プロティアン・キャリアを形成する時には欠かせない要素が2つあります。それが「アイデンティティ」(自分の軸)と「アダプタビリティ」(変化適応力)です。「アイデンティティ」とは自分とは何者であるかということです。ケアワーカーとしての私らしさとは何か、を意味します。自分らしい仕事に没頭できれば心理的幸福感が高まるわけで、今の仕事に満足している人は仕事上でアイデンティティを確立できている人だと言えます。ただ自分らしく働いたとしても成果が出ず、評価が下がれば生活が成り立ちません。つまり社会的ニーズとずれたアイデンティティをよりどころにしていても周囲から歓迎されない。自分らしく働くと共に、それが組織からも求められる、この理想的な状態を手に入れるために必要なものが「アダプタビリティ」です。アダプタビリティとは組織や環境、社会の変化に適応する力のことです。外部環境の変化に応じて自分自身をアップデートしつながら、キャリアを築こうとする意欲のことでもあります。

 

IT技術の進歩、コロナ禍など社会は大きく変化しています。こうした変化に応じて柔軟に対応し、求められるスキルを開発していく必要があります。アダプタビリティは必須。これがかけると自分自身が成長する機会を失ってしまいます。人生100年時代を生き抜くために、変化に翻弄されるのではなく、変化を楽しむことが重要。だからこそ「プロティアン・キャリア」では自分らしいキャリアを形成していく「アイデンティティ」と変化に適応する力である「アダプタビリティ」を共に鍛えることが重視されます。

 

キャリア形成には持続的な行動あるのみ
ではキャリアを形成するために大切なことは何か。それは「持続的な行動」です。田中教授は「キャリア・ワークアウト」の中で「これから先は、学歴や才能ではなく「持続的な行動」による格差が、キャリア形成に大きな影響を及ぼす」と言っています。「持続的な行動」とは知識やスキル、人とのつながりをアップデートしていきながら、自分で自らのキャリアを開発していく活動を、絶え間なく続けていくことです。キャリアとは働くことだけを指すのではなく、「生きることすべて」を意味します。個人が過去に経験してきた「歴史」であり、継続的な経験を通じて能力を蓄積していく「過程」でもあり、これから築いていく「未来」でもあります。常に学び、自分の生き方を再構築する能力を磨き続ける生き方が「自律型キャリア」であり、「プロティアン・キャリア」なのです。
それでは具体的にどのような行動をとっていけば我々は「プロティアン人材」になっていけるのかは「キャリア・ワークアウト」の中に書かれていますので、是非手に取って頂ければと思います。今回は、介護業界ではまだまだ馴染みのないと思われる最新のキャリア理論「プロティアンキャリア」について書きましたが、何かの皆様のささやかな刺激にでもなりましたならば嬉しく思います。

 

「キャリア・ワークアウト」

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コラムの記事pdfダウンロードはこちら

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執筆 皆川 敬

新潟県介護サービス事業者協議会 副会長
サニーウインググループ代表

社会福祉法人ウェルネス理事長

メール t.minagawa@all-grit.co.jp

資 格
■ 経営学修士(MBA)

■ 一般財団法人生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ

■国家資格キャリアコンサルタント

■ 介護支援専門員

■ 介護福祉経営士1級

 

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