「希望をかなえるヘルプカードを知ろう」 新野 直紀(社会福祉士)
認知症の方も含めて本人が望む社会参加を続け、元気に暮らし続けることができる道具の一つに「ヘルプカード」がございます。これまでのヘルプマークとの違いは、「希望をかなえるヘルプカード」は、認知症の本人用に創りだされた道具で本人が認知症に伴う不安や不自由を解消するために必要な内容を具体的に書ける余白があり、必要時のみ利用します。ヘルプマークと併用して活用する人もいます。
あらためて希望をかなえるヘルプカードとは自分が望んでいること(やりたいことや続けたいことなど)を、安心してスムーズにできるために、自分が使うカードです。周りの人に自分が望むことやちょっとわかってほしいこと、お願いしたいことを書いておき、必要な時にだけ見せて使います。使うメリットとしては
「自分をわかってもらえる」
外見からは気づいてもらいにくいことを、ヘルプカードで人に伝えることができます。自分を証明するものにもなります。望みや不安、伝えたいことをわかってもらえますし、何を望み、何をやろうとしているのか、わかってもらえます。またその時々の不安、困りごと、お願いしたいことを伝えることができます。
「忘れても大丈夫」
自分がやりたいことをするために大事なこと(どこで、いつ、何をなど)を、カードに書いておけば、忘れても確認できて安心ですし、人に伝えやすくなり、相手も何が必要かすぐにわかって役立ちます。
「話さなくても、伝わる」
話しにくかったり、ことばが出にくくても、カードがあれば相手にスムーズに伝えることができて、コミュニケーションのきっかけになります。
「パニックを防げる」
焦ったり、パニックになりかけたりした時も、カードをもっていれば必要なことが伝えられ、落ち着くことができます。
「緊急時や災害時の備えになる」
ふだんから外出する時に持ち慣れていると、いざという場合に役立ちます。
誰が使うのかというと、基本的には使いたい人が誰でも使えます。例えば認知症の診断を受ける前の段階の人から、診断を受けた直後の人、地域に出かけている人、ほとんど出かけなくなっている人まで、様々な人たちがカードを使うことにより暮らしやすくなっています。そしてこのカードを使うかどうか決めるのは、本人自身です。周りの人が、この人は使えるとかこの人は使えないと決めつけないでください。本人の可能性やチャンスを奪ってしまうことになります。本人が持ちたいと思っていなかったり、納得しないまま周りが持たせてしまうのもやめましょう。無理に持たせても本人が使わなかったり、ストレスになりがちです。認知症の診断を受けた直後からカードを使い始めることができると、落ち込みを防ぎ、自分なりの暮らしや希望を大切に、前向きに暮らしていくためのエンジンになる可能性があります。
実際に希望の叶えるヘルプカードを作ってみましょう。カードは、人に何を伝えたいか、中身が肝心です。本人が、自分に役立つ、持ちたくなるカードを楽しみながらつくってみましょう。仲間や支援者、家族など誰かと話をしながらつくると、書く内容がはっきりして使いやすくなります。まずは自分の暮らしを思い浮かべてみましょう。
ステップ① 今自分が続けたいこと、やりたいこと、行きたいところは・・・?
ステップ② その途中で、不安なこと、ヒヤリとすることや困ることがある場面を、書き出したり、話したりしてみましょう
ステップ③ その場面で、周りにわかってほしいことやお願いしたいことを、書いてみましょう
「希望をかなえるヘルプカードを使いやすいまちに」
地域のお店等がカードを活かす場面も見受けられます。認知症の人がヘルプカードを使うことを歓迎し、応援するお店や金融機関、交通機関が増えてきています。本人がカードを使ってくれると、何が必要かすぐわかり、関わりが楽になるからです。なじみのお客さんが利用し続けてくれることは、お店等にとってもうれしいことです。
各市町村でも、認知症の人を応援するお店や企業が増えてきています。これからは次の一歩としてヘルプカードを使いやすいお店等がふえていくように、みんなで希望をかなえるヘルプカードがあることをお店等に紹介し、一緒に活かしてみる楽しい企画を立てていきたいものです。そして、最も大切なことは・・・わがまちで暮らす本人がどこに行きたいかをカードを通じて具体的に知り、その行先のお店等で本人の望みとカードについて伝えて話しあってみることがとても大事なきっかけになります。ひとつひとつ地道ですが、本人がカードを使いやすくなり応援者が着実に増えていくことでしょう。
丹野智文さん談
ヘルプカードがあるので使ってみませんか?って言われても本人が必要だと思わなければ、使わない。アセスメントに則った質問ではなくて、世間話の中からやりたいことを聞く。「やりたいことをやるために不安がある、その不安をこういうカードを持つことで解消できますよね」という声かけをしてくれたら本人は「使ってみよう!」と思うのではないでしょうか。
執筆 新野 直紀
・社会福祉士 ・認知症介護指導者 ・認知症ケア上級専門士
・認知症ケアマッピング上級ユーザー
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