「猫でつながる人の縁」 - 介護専門家コラム

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介護専門家コラム

「猫でつながる人の縁」

「猫でつながる人の縁」 新潟医療福祉大学准教授 五十嵐紀子

「猫のいる生活」
日本では、2008年に15歳未満の子どもの数をペットの数が上回って以来、その状況が続いています。ペットというより、家族として一緒に暮らしている、いや、犬や猫を中心に人間が暮らしている、と言った方が近いかもしれません。気がついたら家族の話題のほとんどがペットに関するものだった、ということは、ペットを飼っている方にはよくあることではないでしょうか。時間やお金も惜しみなくペットに捧げ、コロナ禍で増えた自宅でのオンライン会議にペットの猫が乱入する、いわゆるネコハラに、困ったなぁと言いながらもニヤニヤしているのは我が家も同じです。


オンライン会議中の「ネコハラ」

ペット飼育が健康寿命を延ばす、という調査も近年増えているように、人々の心身の健康にペットが貢献しているという肌感覚が、研究によっても証明されてきてもいます。犬と違い、猫は毎朝晩散歩をするわけではないので、運動量が増えることによる健康増進効果はほとんどないかもしれません。ですが、猫との暮らしによって私のQOL(生活の質)は高く保たれていると感じています。この最高にかわいい生き物を撫でているだけでも癒されますが、アニマルセラピーを超えた力が猫にはあると感じています。それは、人と人のつながりをつくるという力です。

 

「猫によって爆上げQWL(勤労の質)」
私の勤務先、新潟医療福祉大学には「ねこ部」があります。ひとつは教職員ねこ部、もうひとつが、昨年立ち上がった学生ねこ部です。教職員ねこ部を立ち上げてから約4年が経ちましたが、今や、本学の教職員の7人に1人がねこ部という知る人ぞ知る一大勢力です。一大勢力と言っても、何かの権力を発動するどころか、そこは猫モード。何もしません。何もしませんが、猫が好きという共通項があるだけで、私たちが無意識に背負ってしまっている常識や様々な見えない「壁」がいとも簡単に崩れ、仕事がしやすくなります。様々な考えを持ち異なる立場に立つ他人同士が同じ職場で働くというのは色々と難しく、時に人間関係が壊れてしまうということもありがちです。より良いものを目指すという目的を共有して、同じ方向を向く、これはどのような職種であっても基本中の基本なのですが・・・。職場での様々な人間関係問題は、猫を介在させるだけで解決してしまうのでは、とねこ部のゆるやかで強いつながりから日々エネルギーをもらいながら妄想しています。

 

「人と人をつなぐ猫」
地域での支え合いを推進するようなことを言いながら、私自身は家と職場の往復の生活でご近所づきあいはほぼ皆無。地域でのつながりを作ろうにもなかなかきっかけが作れないまま10年近く暮らしていました。そんなところにある日、すぐ近くのお宅の猫ちゃんが脱走してしまい、一緒に捜索活動をすることに。猫を見ませんでしたか?敷地に入らせてください、などと声をかけながら近隣のお宅の裏や床下などを飼い主さんと一緒に捜索しました。似た猫を見たという情報を聞いては一緒に一喜一憂したりして、近くに住んでいながら赤の他人同士だった私たちは、猫捜索というきっかけで一瞬で「ご近所さん」そして「猫友」になれました。脱走猫ちゃん、飼い主さんを大いに心配させましたが、人と人をつなげるという大きな功績を残しました。

猫捜索のチラシ

 

「猫との暮らしをあきらめない」
2021年11月、新潟県で初となる、猫と一緒に入居できる老人ホーム、はあとふるあたご複合施設おぎかわが新潟市秋葉区にオープンしました。飼い主が高齢や病気などでペットの世話ができなくなったり、飼い主の死亡によりペットが取り残されてしまうなど、高齢者とペットの問題は、高齢化の進展とともに大きな社会問題となっています。その問題と向き合うために開設されたのがおぎかわです。多くのメディアに取り上げられ、注目されているのですが、問い合わせはあるものの、猫を連れての入居にはまだ至っていないとのことです。おそらく、職員さんも、老人ホームへの入居を考えていらっしゃる方々も、具体的な問題への対処を含めた猫と一緒に老人ホームで暮らすイメージが持ちにくいからではないか、と考えています。おせっかいな私は、学生ねこ部を引き連れ、「猫との暮らしをあきらめない」を実現するための広報活動についてお手伝いさせていただきたいと、施設を訪問しました。なんと、学生ねこ部に猫と暮らすイメージを持っていただけるようなリーフレットのセクションをお任せいただけることに。施設の中だけで完結させず、様々な社会的資源とつなげていく拠点になることを願い、将来保健医療福祉スポーツ分野の専門職を目指す学生たちは、高齢者とペットの問題について勉強し、議論を重ねています。学生ねこ部が手がけたリーフレットをお披露目できる日を楽しみにしていてください!
おぎかわでのミーティング

学生ねこ部ミーティングメモ

 

介護のコミュニケーション よもやま日記 ブログ
新潟医療福祉大学准教授 五十嵐紀子

http://www.kaigogoyoukiki.net/specialist/igarashi/

 

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2022_92.93p_コラム

 

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