介護をビジネスにするな

介護専門家コラム

介護をビジネスにするな　知野吉和

介護保険制度が始まり、株式会社でも介護事業に参入できるようになって、そのころから、『介護をビジネスにするな』という言葉が聞かれるようになりました。
今もそんなことを言う人がいますが、介護を１００％公費で賄うということは、財源は当然、我々の税金です。

少子高齢化がうたわれ始めたのは昭和４０年代です。もう５０年も前から日本の措置による福祉制度は危惧されていたのです。
要するに、社会問題をまるごと日本の責任にするのは難しくなってくることはわかっていたのです。そして２０００年に入りようやく介護保険制度が始まり、介護をビジネスとして市場に開放することで、なんとか税金の負担を軽くしようとなったわけです。

このような現状になってもまだ『介護をビジネスするとはけしからん』と考えている大人がいるようですが、私は、『介護はビジネスになりえていない』と考えています。

介護をビジネスにするな、という言葉の意味は、介護で儲けるな、ということだと思いますが、介護保険事業所で、儲かっている事業所はそれほど多くありません。

会社が儲からなければ、給料も上がらないのです。『介護で儲けるな！』というならば、その人は給料が少なくてもいいのでしょうか？税金がもっと高くなってもいいのでしょうか？

少子高齢化で納税者よりも高齢者が多いから、もっと税金は高くなるのです。長生きが罪、という意味ではありません。社会福祉法人だから信頼がある、株式会社だから信用ができない、という人もいますが、どちらも同じ法人です。むしろ、経営がうまいのは株式会社の方かもしれませんよ。

がんばらなくてはいけないほどの魅力のある職業ならわかりますが、介護はしがみつかないと生き残れない職業なのでしょうか？

介護は優しい人でなければならない、やる気がなくてはついていけない、などという考え方も、そろそろ改めた方が良い時期です。
どこも人員不足で、面接をすればすぐに合格通知が来るような業界です。むしろ日本はどの業界も人員不足です。

従業員が職場を選べる時代です。介護福祉士を活かして介護の世界でがんばろう、という人がどれだけいるのでしょうか？私の知り合いの介護福祉士の半分は異業種に転職しています。

経営者の皆さん、そろそろ目を覚ましてください。現場は今、非常に大変な状況です。この現実を真剣に考えてください。現場の皆さんも、同じです。『やる気のないやつはいらない』とか『最近の若い者は、、』などと言わないでください。今の日本の現状、未来の予想をしっかり見てください。

社会をもっと見てください。現実をしっかり認めてください。利用者の喜びがスタッフの喜び、よりも、まずは、スタッフの健康と生活を守ってください。今日の人材不足は来年もずっと続きます。そして介護経験がない人、資格がない人、よくわからないで入社する人たちがこれからもっと増えてくると思います。

介護施設も廃業する時代です。介護は決して安泰な場ではないのです。そういう意味では、民間からの介護事業への参入はとてもありがたいことなのです。雇用が生まれ、在宅介護の問題を解決してもらえますからね。確実にニーズがある世界です。マネージメントの方法によっては、うまくいっている介護事業所もたくさんあるのです。

ぜひ介護施設に就職、転職を考えている方は、歴史のある法人ではなく、今、元気な法人をぜひ探していただきたいと思います。そして、転職をされる方は、ぜひ、リーダーを目指してください。今、現場には経験がある指導者が求められています。

今の日本の現状、組織の現状、今の現実をしっかり自覚している経営者、リーダーを見つけて、一緒に介護を守る人になってください。課題がたくさんあるような内容になってしまいましたが、その反面、チャンスもたくさんあるのです。

人が来ない、育たない、続かない、という問題に取り組めることです。どの業界でも同じですが、これができた介護施設の未来は明るいのです。とにかく現実から目をそらないことが第一歩です。もしよろしければ、私も一緒に考えさせてください。という宣伝でした。