今、介護現場に必要とされる「心理的安全性」とは? - 介護専門家コラム

今、介護現場に必要とされる「心理的安全性」とは? - 介護専門家コラム

介護専門家コラム

今、介護現場に必要とされる「心理的安全性」とは?

サニーウインググループ代表 皆川敬 

1. はじめに
サニーウインググループ代表の皆川です。昨年に引き続き寄稿させて頂きます。今回私が取り上げたいのは最近よく話題になりますが誤解も多い、しかしながら介護現場にまさに今必要であると思われる「心理的安全性」についてです。文字数の関係上、基本的な内容にしか触れられませんが、介護事業所のリーダーや経営層が最も意識する必要があるのではないかと思います。私自身もどのようにしてこの「心理的安全性」を現場に根付かせていったらいいか日々考え、具体的に動き続けているところです。

 

2. 介護職の離職理由
皆さんご存じかもしれませんが介護職員の離職理由の第1位は「職場の人間関係」です(令和元年度介護労働実態調査結果より・介護労働安定センター)。とかく離職率の問題については賃金面が指摘される傾向がありますが実際は、同調査では「収入が少ない」という理由は6番目になっています。では「人間関係」とは何なのかという話になります。
人の好き嫌い、合う合わないは残念ながら業界に関わらず、どの職場でもあるものです。一人一人の性格や属性も違うわけですから人間関係の悩みはなくなることはないでしょう。では介護事業所のマネジメントの点で考えた時、性格・年齢・資格・働き方の面で多様性の高い介護現場をチームとしてよりよい状態にしていく為に必要なものは何でしょうか。そこにつながる大切な要素として今回ご紹介したいのが「心理的安全性」なのです。

 

3. 心理的安全性とは
「心理的安全性」という言葉は最近よく使われているのですが、字面だけを見ると誤解されやすいのです。実は、心理的安全なチームとは、アットホームで単に結束が強いチームや、人間関係が和気あいあいとしていて努力しなくてもいい馴れ合いの職場のことでもありません。最初に「心理的安全性」という概念を打ち立てたハーバード大学教授のエドモンドソン氏は「チームの心理的安全性とは、チームの中で対人関係におけるリスクをとっても大丈夫だ、というチームメンバーに共有される信念のこと」(ちょっと難解?!)と定義しました。

 

また心理的安全なチームとは、「メンバー同士が健全に意見を戦わせ、生産的でよい仕事をすることに力を注げるチーム・職場のこと」(「心理的安全性のつくり方」石井遼介著より)とも言われます。心理的安全性が高い状況であれば、質問や提案をしても聞いてもらえると感じられて、自分の考えを率直に発言することができます。また、過去のやり方の再考や改革的アイディアを自由に話し合えるチームは、心理的安全性が高いと言えます。それに対して、心理的安全性が低い職場ではどのような問題が考えられるのでしょうか。心理的「非」安全なチームは自分の発言について他のメンバーから「こんな風に思われるかもしれない」という「良かれと思って行動しても罰を受けるかもしれない」リスクを抱えています。エドモンドソン教授は「心理的安全性を損なう要因と特徴行動」を4つ提唱しています。

 

(1)無知だと思われる不安(Ignorant)⇒必要なことでも質問・相談をしない

 

(2)無能だと思われる不安(Incompetent)⇒ミスを隠したり、自分の考えを言わない

 

(3)邪魔をしていると思われる不安(Intrusive)⇒必要でも助けを求めず、妥協する

 

(4)ネガティブだと思われる不安(Negative)⇒是々非々で議論せず、率直に話さない

 

この4つのリスクは「チームの為に行動しても罰を受ける」という不安になるわけです。心理的安全性が低い状態から、「健全に意見を戦わせ、生産的でより仕事をする」チームと成長することで学習も促進され成果を生み出せるようになるはずです。

 

4.日本版「チームの心理的安全性」の4つの因子

心理的安全性は日本でも研究されており海外と異なる点も見えてきていて「日本の組織では①話しやすさ、②助け合い、③挑戦、④新奇歓迎の4つの因子があるとき、心理的安全性が感じられる」(「心理的安全性のつくり方」石井遼介著)と言われています。

 

まず①「話しやすさ」因子は、率直な意見とアイディアを募集するために重要であり、これが確保されているとき、チームの中での意見や情報、質問、指示などが飛び交うようになります。

 

次に②「助け合い」因子はトラブルに迅速・確実に対処する時や、通常より高いアウトプットを目指す時に重要です。これによりトラブルや行き詰まりに際し、必要な事実を共有し、相談し、支援・協力を求めることができます。

 

③の「挑戦」因子は、組織・チームに活気を与え、時代の変化に合わせて新しいことを模索し、変えるべきことを変えるために重要な因子です。これはチームによる「模索」「試行錯誤」と言ってよいでしょう。アイディアを思いつき、深め、発表し、フィードバックを得て、共創することのブレーキとなるような環境を外していくことです。

 

④番目に「新奇歓迎」因子です。「奇」は「異能」という意味で、これはいわゆる多様性重視であり、異なる才能を嫌って同質な集団として人間を歯車のように扱うのではなく、つまり個々人の才能が最大限発揮されているという因子です。

 

ここまで「心理的安全性」とは何か、見てきましたが、皆様の現場を振り返ってみていかがでしょうか?今回はそれをどう作っていくかについては誌面の関係上ほとんど触れられませんでした。「心理的安全性」を作れるかどうかはまさにリーダーシップによります。リーダーシップとは「他者に与える影響力」のことです。これを読まれた経営層、リーダーにかかっていると思います。「心理的安全性のつくり方」の中では個々のチームやメンバーにあわせてしなやかにチームを変えていくことのできる「心理的柔軟なリーダーシップ」が提案されています。ご興味ある方はぜひ手に取ってみてください。

 

<本の紹介>

恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす エイミー・C・エドモンドソン

https://www.amazon.co.jp/dp/4862762883/ref=cm_sw_r_tw_dp_V3158JMSM61KD84XBKFX 

 

心理的安全性のつくりかた 石井 遼介

https://www.amazon.co.jp/dp/4820728245/ref=cm_sw_r_tw_dp_CN8VH7PJVAPQ5CVXSJJF?_encoding=UTF8&psc=1

 

 

執筆 皆川 敬 

新潟県介護サービス事業者協議会 事務局長
サニーウインググループ代表 https://all-grit.co.jp
オールグリット合同会社CEO

メール t.minagawa@all-grit.co.jp

資 格
■ 経営学修士(MBA)

■ 一般財団法人生涯学習開発財団認定プロフェッショナルコーチ

■国家資格キャリアコンサルタント

■ 介護支援専門員

■ 介護福祉経営士1級

 

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