新人が育たないのは誰のせい? - 介護専門家コラム

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介護専門家コラム

新人が育たないのは誰のせい?

ピーエムシー株式会社 斎藤洋

 

こんにちは、ピーエムシーの斎藤です。
私は、介護現場の人材育成の仕事をしています。
毎年この時期は、色々な事業所に入って介護現場の新人職員育成のお手伝いをしています。
春から夏までは、4月に入職した新人が、だんだん仕事を覚えて一人で現場を任されはじめる時期です。

 

忙しい中で指導者の皆さんは一生懸命新人指導をしていますが、毎年必ず「新人が育たない!どう育てたらいいの?」という悩みがあがってきます。
近年、介護人材は職歴や年齢、価値観、雇用形態など色々な意味で多様化が進んでいて、彼ら新人を受け入れて育てる介護現場の皆さんは、本当に大変な思いをされているのだろうな、と思います。新人が思うように成長してくれない時、我々は、どうしても新人の資質や能力など相手の問題にしてしまいがちです。しかし、私たちが工夫することで新人をより成長させることができるとしたらどうでしょうか。以下に、私が現場で見聞きする具体的な事象とその要因、そしてどんな工夫が出来るのか、対応方法を考えてみました。
現場で新人指導に奮闘されている皆さんの参考になれば幸いです。

 

 

1.「新人は、社会人としての常識が分かっていない!問題」
[解説]これは高卒で入職してくる新人の指導者から良く出てくる悩みです。「あいさつがない」「欠勤の連絡をメールやlineでしてくる」など、具体的事例はいくらでも出てきます。
[原因]新人が「ソーシャルスキル」を身につけていないことで起こる問題です。「ソーシャルスキル」とは、新人が利用者と関係を築いたり、同僚と協力して仕事をすすめるために必要とされる技能のことで、ソーシャルスキルの低下は日本全体の若者の課題として広く認識されています。
[対応方法]ソーシャルスキルの低下は、日本全体が直面している問題であり、経産省も「社会人基礎力」という定義をつくり、能力向上をはかるためのチェックリストを作成しているので、これを活用しても良いと思います。また、自施設のローカルルールをまとめた「○○園のルールブック」のようなものを作成し活用している事業所もあります(https://www.roumu.com/rulebook/)。いずれにしても、新人を採用した事業所がソーシャルスキルも教えていくことが大事だと思います。
経産省HPより引用

 

2.「新人が、利用者に対してタメ口で話をしているんです!問題」
[解説]新人の年齢・性別に関係なく起こりやすい現象だと思いますが、不適切ケアやハラスメントにもつながるとても大事な問題です。
[原因]まず、周りの職員の言動を真似してしまう「観察学習」の可能性があります。また、新人の持っている「高齢者観」「介護観」が原因のこともあります。
[対応]介護現場の新人は、「教わる」よりも、「見よう見まね」で仕事を覚えていく部分が多いです。新人を受け入れるチームのメンバーは、「自分たちは新人から観察されている」ことを理解し、部署全体で利用者に対する言葉遣いを改めて確認し、課題があれば修正する必要があります。また、「タメ口問題」の背景には、新人の持つ少し偏った「高齢者観」や「介護観(介護の仕事に対する個人的なイメージ)」が関係している可能性もあります。なぜ敬語で話さなければならないのか、しっかりと説明してください。また、利用者は介護保険料や利用料を払っていますが、新人はそこを理解できているでしょうか?業務の手順や介護の方法だけでなく、制度や疾患のことなど、機会を見つけて新人に教えてあげてください

 

3.「新人の介護がとても雑!問題」
[解説]新人が仕事に慣れて、独り立ちした頃にこの現象がよく出現します。
[原因]「出来てたはずなのにおかしいな」、と思い、やらせてみると出来るのです。でも、任せてしまうと雑な介護に戻ってしまうのです。これは「同調行動」が起こっている可能性があります。空気を読んでみんなのスピードに合わせようと焦っているのかもしれません。
[対応]「新人はゆっくりでいいんだよ」といくら言葉で伝えても無理で、これを修正するには、チームのメンバーで申し合わせて、全員で「速さより丁寧さ」を重視してケアを行っていく必要があります。

 

4.「いつまでたっても指示待ちなんです!問題」
[解説]入職後3~6ヶ月後、新人が独り立ちして暫くたった頃によく聞かれる悩みです。
[原因]指導者やチームのメンバーが「新人の状況に応じた関わり」が出来ていなかったのかもしれません。この場合「SL理論(状況対応型リーダーシップ)」が参考になると思います。
[対応]SL理論では、新人の成長度を能力やスキル、積極的姿勢などに分け、それぞれの新人の成長を4段階に分類しました。指導者や上司は、4つの段階のそれぞれの時期にあわせて有効なリーダーシップのスタイルを変化させていくべきであると述べています。まず、指導初期の第一段階(S1)では、部下の役割と職務を明確にし、細かく説明・指導します。第二段階(S2)では説明・指導しながらも、部下の意見や感想を聞きます。第三段階(S3)では基本的は部下に任せますが、根拠や目的が理解できているのかを確認します。第四段階(S4)では、仕事は部下に任せますが、困ったときはいつでも相談に乗れるようにしておきます。介護の現場ではS2とS3の段階が抜けてしまっていることが多く、新人が個々の介護技術や業務の流れを表面的に理解した時点で独り立ちさせられていることが多いな…と感じています。ここをしっかりと理解させないと、新人はいつまでたっても主体的な行動をとることができるようにはなりません。自分の行動に自信が持てないからです。自信が持てるようになるには、自分の行動の根拠が説明できるようになることが必要です。新人に問いかけて自分自身の言葉で説明させてみてください。少し時間がかかるかもしれませんが、とても大事なことだと思っています。

5.まとめ
ここまで述べてきたように、新人が成長しない理由は、実は受け入れメンバーの方にも原因があります。新人をなるべく早く一人前の立派な職員にしたければ、より組織的に、より戦略的に新人教育を行っていく必要があります。最近、人材マネジメント界隈では「オンボーディング」という言葉が良く出てきますが、これはまさに「組織的で戦略的」な新人育成の方法論です。私たち介護業界でも、この考え方を参考に、新人育成を改善していくことが求められています。

参考・引用文献
https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/index.htm(経産省「ソーシャルスキル」)
https://www.katsuiku-academy.org/media/modeling-bandura/(活育アカデミー「観察学習」)
https://hrnote.jp/contents/c-contents-sogo-onboardingtoha-190626-2/ (HR-NOTE「オンボーディング」)
https://roumu.com/(労務ドットコム「職場のルールブック」)

 

 

ピーエムシー株式会社 斎藤洋

介護現場の人材育成を考えるブログ
http://www.kaigogoyoukiki.net/niigata/blog/020/

ピーエムシー株式会社

https://www.pmc-jinzai.com/

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