介護職のリアリティショックを防ぐ  - 介護専門家コラム

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介護専門家コラム

介護職のリアリティショックを防ぐ 

介護職のリアリティショックを防ぐ ピーエムシー株式会社 斎藤 洋

 

1.リアリティショックの定義

リアリティショックとは、「新入社員が組織において直面する現実と、直面すると期待していたこととの不一致」のことです。介護職においては「思ったよりも忙しい仕事だ」「思っていたような仕事ができない」など、新人職員が直面する現実の厳しさがリアリティショックに該当すると考えられます。リアリティショックは入職後の新人に「モチベーションの低下」「早期離職」などのネガティブな影響をもたらすことが知られているため、入職後の環境整備やフォローが大切になってきます。このコラムでは、新人だけでなく慣れない部署へ異動した介護職、新たに役職についた介護職の方もリアリティショックを感じやすいと考え、以下に対応策を検討していきたいと思います。

2.リアリティショックの要因

新人職員の仕事に対する認識の甘さや入職前の業界の分析不足など、リアリティショックは個人の問題として捉えられやすい部分がありますが、実際には新人を受け入れ育成する側の情報共有・伝達の不足や、OJT・オリエンテーションの不備等が新人職員のリアリティショックに大きく影響することがわかっています。

リアリティショックは、新人職員の属性によってその内容が異なる可能性があるため【表1】、どのような部分で期待と現実の「ずれ」が生じているのか、新人の話を良く聞く必要があります。

 新人がどのような「ずれ」を感じて不安になっているのか、共感や傾聴を意識して聴くことが大事です。

 

(表1)介護職員のリアリティショック
職員のタイプ リアリティショックの内容
相談員兼介護職の新人
(福祉系大学の卒業生)
・相談業務に就くために就職したのに介護の仕事ばかりで先が見えない。
介護福祉士養成校卒業の新人 ・もっと色々な意味で成長できる仕事だと思っていた。
無資格未経験で入職した新人 ・思っていたよりも大変で忙しい仕事だ。
新たにリーダーに任命された職員 ・リーダーになっても大変なことばかりで何も良いことがない。

 

3.リアリティショックを回避するには

(表2)リアリティショックの回避策
回避策 概  要
RJP(現実的職務予告)を行う 採用⇒配属される前に、ネガティブな側面も含めた現実的な職務情報を
採用希望者に提供する。
予期的社会化に影響を与える教育訓練の実施 新人の携わる職務と直結した訓練を実施する。職務に対する正確な情報や
新人の職務上の強み・弱みについて自己理解を促す。
プロアクティブ行動を促す 組織からの期待に応えるために新人自ら行動を起こしたり、積極的に組織に
馴染もうとする行為。
上司や同僚からの
ソーシャルサポート
社会的関係の中でやりとりされる精神的あるいは物質的支援のこと。
具体的には上司面談等の方法で提供される。

 

リアリティショックを回避するには、経営学においては、入職前の「RJP(現実的職務予告)」の実施が、看護学においては「知識の不足」「技術の不足」を補うことが効果的だと言われています。

また、新人職員に望まれる行動として「プロアクティブ行動を促す」という考え方があります。プロアクティブ行動とは「新人職員が、周囲からの期待に応えるために自ら行動を起こしたり、積極的に組織に馴染んだりしようとする行動」のことです。

他にリアリティショック回避に有効な施策としては、上司や同僚、メンターからの「ソーシャルサポート」があります。「ソーシャルサポート」とは、一般的には「社会的関係の中でやりとりされる先進的あるいは物質的支援のこと」で、上司からの「ソーシャルサポート」の具体的方法として、定期的な面談等があります。

介護業界では上司による新人職員への面談が一般的に行われていますが、やり方によっては新人のリアリティショックを回避するために非常に有効な手段になります。

新人職員と面談を行う際、面談者は新人職員の持っている不安や不満(つまり本音)の言語化を促し、それを傾聴し、必要に応じて具体的な対応をとることが求められます。

新人職員が自分の気持ちを言語化することは、新人の自己開示を促すことであり、新人の自己認識を深めることにつながります。また、面談者が効果的な助言(フィードバック)を与えることで新人職員の不安が軽減され、前向きに仕事に向き合う準備が出来ていきます。

このような面談を行う場合、面談者に必要なのが「質問のスキル」です。【表3】に、新人職員の思いを引き出すための4つの質問をまとめたのでご参照ください。

 

(表3)質問の種類
回避策 概要
クローズクエッション 「朝ごはん食べましたか?」–yes/noで答えられる質問
オープンクエッション 「朝ごはん何を食べましたか?」–5w1hを聞く、yes/noで答えられない質問
スケーリングクエッション 現状を簡単にチェックできる質問

「今日の元気度は何点?」「その点数を付けた理由は何?」

コーピングクエッション 「それほど大変なのに頑張ってこれたのは何故なの?」–

逆境の乗り越え方を確認し、自信を持ってもらうことができる質問

 

4.まとめ

今回は新人職員等に多く見られるリアリティショックとその回避策について検討しました。リアリティショックは介護職のモチベーションを低下させ、離職意思を高める要因となります。リアリティショックの有効な回避策のひとつとして、上司からのソーシャルサポート(定期的な面談等)があります。面談技術を学ぶ事で、より効果的な面談を行うことが出来るようになります。

 

【参考・引用文献】

・介護労働安定センター(2016)「介護労働実態調査」

・花岡智恵(2010)「介護労働者の早期離職要因に関する実証分析」

・尾形真実哉(2012)「リアリティショックが若年就業者の組織適応に与える影響の実証研究ー若年ホワイトカラーと若年看護師の比較分析ー」組織科学,Vol45 No.3 49-66,

 

ピーエムシー株式会社 斎藤洋

介護現場の人材育成を考えるブログ
http://www.kaigogoyoukiki.net/niigata/blog/020/

ピーエムシー株式会社

https://www.pmc-jinzai.com/

コラムの記事pdfダウンロードはこちら

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