おひとりさまを支える、安心なしくみを。 - 介護専門家コラム

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介護専門家コラム

おひとりさまを支える、安心なしくみを。

介護業界では周知の事実でありますが、施設入所や病院への入院の際に施設や病院が「身元引受人」を求めてきます。一部の施設では身元引受人が いないと入所を断るケースもあります。支払いができない時に代わりに支払いをするだけでなく、本人が判断できないときにどういう治療を受けるか(例えば、手術や延命措置をするかしないか)といった治療方針について本人の意向をくみ取って同意をしたり、必要な日用品を用意したりするために身元保証人が求められるのです。もちろん新潟県内も例外ではありせん。昨年、新潟県立大と身寄りなし問題研究会が共同で、新潟県内のすべての施設・病院へのアンケートを行った結果からも同様の結果が見られました。
ワールドステイのように身寄りなしの方を積極的に受け入れる施設はまだまだ少数です。本来はワールドステイのようなサービス付高齢者住宅や住宅型有料老人ホームが最後のセーフティネットになるのではなく、社会福祉法人が運営している特別養護老人ホームなどが生活困窮者や身寄りなしの方を積極的に受け入れるべきであり、その役割を担っているはずですが、現状ではそうなっていません。実際、「身寄りなしの方」の受け入れには様々な課題があります。冒頭にも書いたように施設費用の支払いや医療同意のこと、そして死後事務。ご遺体の引き取り手、葬儀、遺品の整理やさまざまな手続き等が課題であり、施設側の負担も大きくなります。それらの課題を解決しないでただ施設に受け入れを強制するだけでは施設が困るだけでなく、身寄りなしの方の権利を守ることもできません。


住宅型有料老人ホームワールドステイ向陽にて

今年の春、 日本の世帯数の将来統計が発表されました。21年後の2040年に高齢世帯の約4割が一人暮らし世帯となり、もう一人暮らしが当たり前の世の中になります。
しかし、介護や福祉の仕事をしているとつくづく思うのは、日本の諸制度においては自らのことをできなくなった際に支援してくれる家族がいることを前提とした社会システムになっているということです。例えば病院に入院するとき入院手続きのためたくさんの書類にサインし、入院生活に必要な衣類、タオル、ティッシュ、洗面用具を揃え、時には病室で付きそい、手術にも立ち会う必要があります。施設に入所するときも同様で、そしてそれは死んだときも…親族がいないと満足に入院・入所ができない。そして安心して死ぬこともできない。何でも「家族が」という風潮が強く、施設や支援者が家族代わりを求められるのが現状です。「家族による支援」をとらえなおし、家族以外の周囲の者、地域、社会等の関係性につ いて再検討する必要があります。
私は、身寄りなしの方の支援にはマンツーマン型の支援が有効だと考えています。「本人につく」イメージで、入退院・入退所の前後・入院中をとおして本人を支援する支援者。例えば、サニーウイングがやっている「ひなた相談所」のように、まるで親族のように利用者に寄り添い、あらゆる困りごとを支援していく相談所や、身寄りなしの方本人も含めた地域の互助組織による支え合いが考えられます。財産管理などの専門的なことは成年後見制度を利用し、入退院の付き添いや日用品の準備などの、手間はかかるがそれほど専門性がいらないものの支援を、地域の互助組織を活用して支え合うのも有効だと思います。
また、身寄りなしの方本人を含めた互助組織には大きな効果があります。社会的孤立の防止・解消が図られ、支えられるだけでなく助ける存在として社会における役割を獲得し、社会に参加できるようにもなります。このような仕組みこそ、国が進めている「地域包括ケアシステム」ではないでしょうか。そんな身寄りなしの方が、社会的に排除されたり不利になったりする状況を打破すべく、平成26年6月に「身寄りなし問題研究会」を立ち上げました。「身寄りなし」の法的な定義はありません。研究会としては、「家族・親族がいない方」または、「いても疎遠で、遠方にいる方」 。「関係性の問題等のために家族・親族からの支援が受けられない方」と定義づけしています。身寄りなしの様々な課題を分析し、代替えする制度や解決する仕組み作りなどを研究会参加者で考えて発信しています。私たちは、将来的に身寄りなしの課題が少しずつ解決され、病院への入院ができ、特養などの施設への入所がスムーズになることを望んでいます。
ワールドステイの新潟支社長に「研究会のせいで入所者が減った」と言わせたい(笑)


身寄りなし問題研究会 須貝 秀昭
【Komachi介護ご用聞きネット 介護専門家ブログ】
http://www.kaigogoyoukiki.net/specialist/sugai/


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