なりたい人になるために - 介護専門家コラム

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介護専門家コラム

なりたい人になるために


本誌の前号で「憧れの先輩に実習生が聞いてみた」という特集に協力してくれた当時大学4年生の2人が介護施設に就職しました。就職してからわずか3ヶ月弱とはいえ、顔つきが学生時代とは違います。実習生やアルバイトという立場でいたときには気づかなかったことや、考え方が変わったことなど、お二人の職場にお邪魔してお話を伺ってきました。

はあとふるあたごグループホームに就職した加藤季代佳さんは、学生の時から、ネガティブな経験をしても、そこから新たな自分を発見して成長につなげようとする姿勢と、やりたいことをやるためにはどうしたらいいか考え行動する力が抜きん出ていました。加藤さんが学生時代、実習を振り返り、語った自己分析は印象的で今でもよく覚えています。利用者さんに靴下を履かせることがうまくできず、こんな簡単なことすらできない自分にがっかりした、という1年生の時に初めて行った実習先での経験なのですが、自分自身を過信していたという気づきに加え、介護の専門性を学んでいるにも関わらず、自分の目指す職業に対して「誰でもできるような仕事」という偏見のまなざしを向けていた、という考察をしていました。

その鋭い自己分析力は就職しても変わっていませんでした。自分自身に負の感情が湧いてきた経験について話してくれました。忙しくて疲れている時、もっとこうだったら楽に介助できるのに、といった感情が湧いてきたことにとまどい、その気持ちを泣きながら上司に話したのだそうです。そのような「負の感情」は悪いものとしてふたをしようとしたけれど、聴いてもらったことで、その時の感情を冷静に分析することができたと振り返っていました。じっくり耳を傾けてくれる上司がいなければ、負の感情は自身の中に堆積し、成長につなげるべく昇華することはなかったでしょう。

もうひとつ加藤さんが語ってくれた気づきは、責任とは何かということでした。何か失敗をしたとき、自分を責めるというのは何か違うと気づいたそうです。自分を責めるというのは責任ではなく、楽な逃げ道なのではないかと。失敗を冷静に分析し、改善につなげる意識を常に持つことが、利用者さんに対する責任でもあり、学生の時には意識していなかった責任の形なのだと、噛みしめるように語っていました。加藤さんは、利用者さんに喜んでもらうためのアイデアをたくさん出し、一緒におかしづくりやハーバリウムづくりなどをやってきたそうです。組織の中で働くようになると、やりたいことがそのままできるわけではないことも多々ありますが、加藤さんのお話を聴いていると、やりたいことをかなえるためにはどうしたら良いか、上司が一緒に考えてくれる環境で仕事ができていることがよくわかりました。加藤さんの上司である恩田さんがおっしゃっていた「人は生ものなのでちゃんと育てないと腐る」ということばが印象的です。加藤さんの今後の夢は、尊敬する恩田さんといつか対等になれること、とのこと。納得です。

薄結香さんは、実習で行き、その後もアルバイトをしていた特別養護老人ホーム、豊浦愛宕の園に就職しました。仲間になりたいと思えるスタッフの皆さんと、この人みたいな介護福祉士になりたいと思えるロールモデルがいたことで、実習で訪れてからほとんど途切れることなく同施設で介護の仕事に触れてきた薄さん。その過程でどのような変化があったのかお聞きしてきました。
連日で利用者さんと接する時間が圧倒的に多いということや、デスクワークなど介助以外の業務の膨大さを実感したということを挙げていましたが、何より、資格を取って仕事をするという「覚悟」ができたことが違うと語る薄さんの表情が、学生時代とは完全に違って見えました。
思わず感情があふれてしまったという「事件」もあったそうです。ある男性の利用者さんの排泄介助中に髪の毛をつかまれて怒鳴られてしまったとのこと。とても驚いたそうなのですが、その経験が「腑に落ちた」と言う薄さんの言葉に私が驚いてしまいました。それはどういうこと?と聴くと、利用者さんに手を出されることは他人事だと思っていたのが一気に自分事になり、こういうこともあるんだと「腑に落ちた」のだそうです。「腑に落ちる」という経験は人生の中で何度も訪れるものではありません。腑に落ちるというスイッチにより、冷静に分析し、改善につなげるというモードに切り替わったという感情と思考の変化の話に思わず身を乗り出してしまいました。薄さんが大学1年生の時、新潟水俣病を学ぶフィールドワークをし、学んだことを動画で表現するというゼミ活動を行ったのですが、薄さんは助監督として動画の構成や演出などについてアイデアを出し活動をリードしていました。といっても、先頭に立って指示を出し、ぐいぐい引っ張るのではなく、ゼミ生みんなの特性や役割を尊重しながら良いところを引出し、作品に仕上げるために調整するという力が秀逸でした。薄さんのそのようなリーダーシップが、介護の現場でも活かされてくること、間違いないと確信しています。薄さんが目指すロールモデル、熊倉さん(前号28~29ページ参照)のような実習指導者になるという夢はそれほど遠くないかもしれません。


新潟医療福祉大学 准教授 五十嵐 紀子
【介護のコミュニケーション~よもやま日記~】
http://www.kaigogoyoukiki.net/specialist/igarashi/


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